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4-25 神子の印

Autor: 柚月なぎ
last update Última actualización: 2025-11-03 06:52:38

 竜虎と清婉が眠りについた頃、無明と白笶は逢魔を呼んで三人で湯に浸かっていた。乳白色の温泉は露天風呂で、顔は涼しく身体はその分あたたかい。

 話し合った後に一度みんなで入ったので、無明と白笶は本日二度目の湯だった。逢魔は正直な話、湯に浸かる必要はないのだが、どうしても一緒にと無明が言うので、男三人で浸かっているのだ。

(それにしても細いな。ちゃんとご飯食べてる?)

 生白い自分の肌は仕方ないとして、無明は細い上に色白だ。いつもと違い、頭の天辺にお団子を作って纏めている。ほんのりとお湯のおかげで色付いているが、手足も腰も細いことに変わりはない。

「どうしたの? 今日は静かだね、」

 珍しいものでも見るように、無明は逢魔に声をかける。

「まったりしてるだけだよ。ああ、そうだ、ほら、前に言ったこと憶えてる? 神子の印のこと」

 あの渓谷で衣を剥がれたことを思い出す。無明は今更だが恥ずかしくなってきた。あの時は呆然としていたが、今思えばすごいことをされていたのだと。

「俺、そんなの見たこともないんだけど。白笶、知ってる?」

 なぜ自分に訊くのか、と白笶は心の中で激しく動揺をする。しかしいつもの如く顔には出ない。便利な顔だと逢魔は肩を竦める。

「腰の、······右側に、······五枚の花びらの痣が······」

 主に忠実な華守は、口ごもりながら答える。それを聞いて、逢魔は大爆笑していた。

「あはは! もうホント、最高だよ! わ、笑いすぎて、腹が痛いっ」

「逢魔、なんで笑ってるの? そんなに変な痣なの?」

「ちがっ······そうじゃなくてっ······くくっ······」

 バシャバシャと湯を叩いて、逢魔は涙目で引きつりながら答える。

(変わらないなぁ。うん、ふたりは昔からこんな感じだった)

 幸せだ、と逢魔は眼を細める。よしよしと無明の頭を撫でて、その手をそのまま頬に滑らせて囁く。

「とても、綺麗だよ、」

 かあぁあと無明は真っ赤になる。顔が良い逢魔は、まるで恋人に言うように真顔でそんなことを言うので、思わず言葉を失ってしまう。

「逢魔って、······いつもそうなの?」

「あなたにだけって、言ったでしょ?」

 ふっと微笑を浮かべ、絵に描いたような美しい青年が顔を覗き込んで来たかと思えば、急にその顔が遠ざかる。

「近い。離れろ」

 白笶が無明の肩を抱いて自分の方へ避難させたようだ。えーずるい。俺も俺も。と逢魔が磁石のようについて回る。くすくすと頭上で繰り広げられている攻防に、思わず無明は笑ってしまった。

(あの神子も、こんな風に三人の時間を過ごしていたのかな?)

 玄武の氷楔の中で見た神子は、笑っていた。自分も、あんな風に笑えているだろうか。

「ごめんね······ありがとう、ふたりとも」

「どうして謝るんだ?」

 ありがとうはいいとして、どうしてごめんね、なのか。白笶は不安になる。あの時も神子はそう言っていた。ごめんね、ありがとうと。

「······なんで、だろう?」

 自分でも自然に出た言葉で、そこになにか意図もなければ理由も見つからない。無明はぽろぽろと勝手に溢れてくる涙に驚いていた。

「大丈夫だ······どこにも行かない。ここにいる」

 白笶は、そっと無明を引き寄せて抱きしめる。逢魔も心配そうに頬を流れる涙を拭う。

「泣いてもいいよ。俺が涙を拭ってあげるから」

 言って、困ったように笑う。泣かないで、とは言えなかった。どうして泣いているのかもわからない無明は、ふたりの言葉に救われる。

 いつまでも続けばいいと、そう、思ってしまったのだ。そんなことは赦されないと、心のどこかで解っていながら。

 翌日、一行は玉兎の都へと向かうこととなる。竹林に囲まれている玉兎の都は趣があり、竹よりもずっと低い建物が多く、全体的に黒を基調とした木材を使用しているせいか、他の色がよく映えて見えた。

 聞いた話では、冬は雪が降れば白が映え、春や夏は緑が、秋には朱が映える、美しく賑わいのある都の、はずだった。しかし、夕刻前に着いた都はまるで廃都かのように静まり返っており、市井は人の影がなく、風の音だけがひゅうひゅうと道を歩いていた。

 そして、玉兎の地に辿り着いた無明たちを待っていたのは、思いも寄らない出来事だった。

■第四章 謀主 〜完結〜■

✿〜読み方参照〜✿

無明《むみょう》、白笶《びゃくや》、清婉《せいえん》、逢魔《おうま》、竜虎《りゅうこ》

氷楔《ひょうせつ》、玉兎《ぎょくと》、華守《はなもり》

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Comentarios (2)
goodnovel comment avatar
柚月なぎ
kyanosさま。 着いて早々事件が····(@_@;) 清婉はいつもこんな感じですが、みんなにちゃんと愛されてますので(笑) 第五章からはストックの関係で週1話更新となります。
goodnovel comment avatar
kyanos
更新有り難うございます! 無明が他意なく言った言葉で白笑の圧を感じてしまう清婉に同情しつつ笑ってしまいました。 玉兎の都せっかく辿り着いたのに病が蔓延していてまるでコ◯ナの時のようです。 病鬼を操る四天の一人手強そうでドキドキです。 無明も藍歌さまもハッピーエンドと伺って良かった! 彼等の周りも幸せなら良いなと思います(笑)
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